フォード マスタング V8 GTパフォーマンスパッケージ 試乗レポート(2/2)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
MTゆえのパワフルでダイレクトな感覚が味わえる
まず感銘を受けたのはエンジンフィールだ。MTゆえエンジンの本来のキャラクターがダイレクトに伝わり、パワフルなだけでなく、なかなかドラマチックな性格の持ち主だということがうかがえた。
回転フィールにはSOHCらしい精度感がありながらも、往年のアメリカンスポーツ的な鼓動を感じさせ、踏み込んだときに轟かせるサウンドの高まりにもホレボレさせられる。スロットルオンの瞬間に間髪入れずにグッと前に出るあたりも、ハイパフォーマンスカーらしい感覚に満ちている。
そのまま何の衰えも見せずにレッドゾーンの6,500rpmまで一気に吹け切ってしまう。このあたりはファイナルギア比を落としたことも少なからず効いているはずだ。
そして、MTでは重要となるシフトフィールも期待どおり。カチッとして剛性感が高く、シフトチェンジを行なうこと自体が楽しみになる。また、クラッチのミートポイントが掴みやすく、エンジンもトルクフルなので、ゼロ発進もまったく苦にならない。
欲をいうと、各ギアのレシオがちょっと離れ気味なので、もう1速あるとなおよかったところではある。
足まわりには、ベースモデルの1インチ&1サイズ増しとなる、同じ銘柄の19インチタイヤを履く。ベースモデルではちょっとバタつく感触も見受けられたところだが、わずかに扁平なタイヤを履く同モデルのほうが、その感覚が薄れ、むしろ乗り心地がよくなったように感じられたのはちょっと意外だった。
さらに、車重がベースモデルよりもずいぶん軽くなったように感じられた。それとともに、俊敏性が増し、一体感のある走りとなっていた。パフォーマンスの向上は疑うべくもないだろう。
また、マスタングというと、リアサスペンションが独立ではなくリジッドであり、それを悪く言う向きもあるのだが、むしろ横剛性の高さはアドバンテージ。直進性が高く保たれ、限界域でも動きが読みやすく、コントロールしやすいなどという大きなメリットがある。
ブレーキのフィーリングも、ベースモデルよりもコントローラブルな印象が増しており、好感触だった。
このモデルは、MTを積みファイナルを落とし、タイヤやブレーキを変え、タワーバーを付け・・・ということを、単にベースモデルに足し算するにとどまらず、各要素がパッケージングされたことが相乗効果を生んでいるように思う。トータルでの走りの仕上がりは、予想以上に高いレベルであった。
せっかくのこのモデルを25台しか売らないなんて、もったいないと思ったほどだ。スポーツカーとしてのマスタングに期待するなら、この機会を逃す手はないのでは?
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