フェラーリ FF 試乗レポート/金子浩久(1/3)
- 筆者: 金子 浩久
- カメラマン:島村栄二
フェラーリ第3の路線
ひとくちにフェラーリと言っても、いくつかの系統があり、それぞれにキャラクターを持っている。
まず、いつの時代も変わらずラインナップされているのが12気筒エンジンを搭載したベルリネッタ(イタリア語で“クーペ”という意味)系とV8エンジンをミッドシップに搭載する少し小振りなベルリネッタの2系統。現在のフェラーリでは前者が「F12ベルリネッタ」で、後者が「458イタリア」と「458スパイダー」。12気筒は、かつては「テスタロッサ」や「512TR」のように水平対向12気筒をミッドシップに積んでいたこともあったけれども、「F12ベルリネッタ」やその前の「599」や「マラネロ」などはフロントにV型12気筒を搭載して後輪を駆動している。
この2車種のベルリネッタ路線に並行して第3の路線がある。電動開閉式ハードトップを備え、V8で後輪を駆動する「カリフォルニア」と、今回テストした「FF」である。どちらもここ数年間にデビューしたブランニューだ。
個性的なルックスにV12・4輪駆動・4人乗り
中でも「FF」は異色のフェラーリだ。V12をフロントに積んでいる点はF12ベルリネッタと共通しているが、なんと4輪を駆動して4人乗り。
外見だって他のフェラーリとはずいぶんと趣を異にしている。
4人乗りでテールゲイトを備えているから、ルーフは他のベルリネッタのようになだらかに下がってくるのではなくて、テールエンドでスパッと切り落とされたような形をしている。専門的には「コーダ・トロンカ」とか「カムテール」と呼ぶのだけれども、とても個性がある。一般的にイメージされる、いわゆるスーパーカー、スポーツカーとしてのフェラーリからはちょっと遠いカタチをしているから、パッと見てフェラーリだとわかる人は少ないだろう。
でも、そこがいいじゃないかと個人的には思う。新しいカタチ、新しいスタイルへのチャレンジはフェラーリのようなクルマこそがドシドシ進めて、新しい時代の新しい美を生み出して欲しいからだ。
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