ダイハツ 新型 ムーヴ・ムーヴカスタム 試乗レポート／渡辺陽一郎(4/6)

機能性や取り回し性能がさらに向上

取りまわし性については、斜め後方が見やすくなった。先代型は外観を躍動的に見せるため、サイドウインドーの下端を後ろに向けて持ち上げたが、新型は水平基調に改めている。ボディ後端のピラー(天井を支える柱)は太めになったが、縦列駐車などはしやすい。14インチタイヤ装着車の最小回転半径は、先代型と同様に4.4mだから、小回り性能も申し分ない。

メーターやスイッチが収まるインパネは、従来型と同じく機能的な配置。それでもメーターは廉価グレードを含めて全車が自発光式になる。クッキリと表示されて見やすい。ATレバーやエアコンスイッチの操作性も良好だ。そして前席は、先に述べたように座り心地が向上して体をしっかりとホールドする。

一方、後席は、先代型と比べて座り心地はあまり変化していない。着座位置が先代型に比べて10mm下がったこともあり、床と座面の間隔が不足気味だ。座面の角度も水平に近いので、後席の乗員は足を前に投げ出す姿勢になりやすい。座面の柔軟性も、もう少し増して欲しい。

それでも頭上や足元の空間は広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座った同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ半。頭上にも握りコブシが1つ収まる。これはセダンでいえばLサイズ並みだから、居住空間の広さは十分だ。

荷室・シートアレンジの使い勝手も向上したが・・・

荷室の使い勝手も向上した。広さは先代型と同等だが、後席のスライド機能が左右分割式になり、乗員の数や荷物の量に応じて調節を図りやすい。

先代型と異なるのは、後席の畳み方だ。先代型では後席の背もたれを前に倒すと座面も下がり、フラットな空間が広がった。しかし新型に座面を昇降させる機能はない。だから背もたれを前に倒すと、広げた荷室の床に少し段差が生じる。前述のように着座位置を10mm下げて段差を小さく抑えたが、代替えユーザーは使い勝手に支障がないか確認した方が良い。

アレンジを変更した理由として、使い勝手の向上のほか、コストダウンも挙げられる。開発者によれば、「今はタントの売れ行きが好調。後席を一体スライドにするより、タントのシート骨格を使って独立スライドにした方が、コストが安くなる。ただし折り畳み機能は、室内空間とのバランスでタントと同じにはできず、背もたれを前に倒すのみとなった」とのこと。軽自動車は価格を安く抑えねばならず、常に機能とコストの調和を考えながら開発されている。

リアゲートは、先代型までは右側にヒンジを備えた横開き式だったが、新型は一般的な縦開き式に変更。狭い場所で開閉しにくくなった代わりに、雨天時には持ち上げたリアゲートによって雨を避けられる。

スマートアシストはさらに進化

装備では、安全面を充実させた。先代型と同様、時速30km以下で作動する赤外線レーザーを使った衝突回避の支援機能「スマートアシスト」が備わる。さらに後ろに向けた音波センサーも加わり、時速10km以下で後退中、障害物を検知すると警報を発する。前方、後方ともに、車両が壁などに向いた状態で強くアクセルペダルを踏み込むと、誤操作と判断してアクセル開度を絞る機能も設けた。試乗したムーヴ X  SAなど、これらの安全装備が装着されたグレード(末尾にSAが付く)では、サイド＆カーテンエアバッグも6万4800円でオプション設定されている。

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