シトロエン C6 海外試乗レポート(3/3)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:シトロエン・ジャポン
シトロエン C6 海外試乗レポート
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まるで路面の凹凸を正しながら進むかのようなフットワークテイスト

シトロエンC6のバリエーションは、1ボディ2エンジンという極めてシンプルな構成。エンジンは3リッターのV型6気筒ガソリン・ユニットに加え、「全体では販売のおよそ80%をこちらが占めると予想される」というディーゼルの2.7Lターボ付きV6ユニットが用意される。ただし日本に導入の予定があるのは、もちろん前者のみという事になる。

ガソリン・エンジンが発する最高出力は215hpという値。車両重量は1.8トン級だからその加速力は率直なところ、必ずしも強力という印象ではない。それでも、常用域で不足を感じる事はまずないしアクセルペダルを深く踏み込めば周囲の流れをリードする事ももちろんたやすいが、オートルート上の登り勾配など、フラッグシップ・セダンらしい“余力”に溢れているかと尋ねられるとその返答に窮する場面もある。

このあたりは、現在のシトロエンがアメリカに販売網を備えていない事とも大いに関係があるだろう。アメリカ市場もをターゲットとするのであれば、より大きな排気量のエンジンを搭載し、場合によってはさらなる多気筒エンジンを積んだ仕様も用意をしないとそこでは勝負にならないからだ。

これまでC5に採用をされてきたものをさらにリファインした、シトロエン独自の油空圧式サスペンションがもたらす乗り味はやはり独特だ。とにかく、高速クルージング時のまるで路面の凹凸を正しながら進むかのような際立ったフラット感の高さは圧倒的。「普通の脚では絶対に不可能!」と思わせるそんなフットワークのテイストは、C6の走りの最大の見せ場である事は間違いない。

一方、低速での市街地走行では、そうしたサスペンションも路面凹凸を完全にいなしきれない傾向は残っている。こうした領域では、より一般的なエア・サスペンションの方にアドバンテージがあるようだ。

ところで、C6の独特のエクステリア・デザインは、必ずしも基本的な空力性能に優れているとは言えないようだ。特に、丸味を帯びたリア・エンドの造形は一般に「揚力に対しては不利」と言われるもの。このクルマもそうしたコメントを裏付けるかのように、速度によって2段階のアタック角を備えたリトラクタブル式のスポイラーがトランクリッド後端から姿を現し、空力特性を補正する。

65km/hでまず一段目、125km/h以上で二段目の角度が与えられるこのスポイラーは、「高速時には制動距離を短縮させる」という“効用”が謳われるところからある程度の抵抗力を生み出していることも読み取れる。多少の空力性能の優劣よりも独自のエクステリア・デザインを優先させたこのあたりは、やはりドイツ車などとは大きく異なるクルマづくりの思想を感じさせるところでもある。

およそ300kmという国際試乗会での試乗ルートの終点は、パリ中心地のホテルに設定されていた。夕刻のラッシュアワー、それも週末とあって延々と続く大渋滞の中、周囲のドライバーからは道行くC6に多くの好奇の視線が注がれる事になった。果たして、そうした視線の奥にあるものが好意的なものであるのか否かは計り知れなったが、しかし彼らがきっとこのクルマに対して「街の風景を変えるに足るエネルギー」を感じたのは間違いないと思う。

思えば、エッフェル塔にしてもシトロエンDSにしても、最初は多くの人がそのデザインに“NON”の反応を示したという。が、それを乗り越えて芸術の国なる称号を手にしたのもフランスという国だ。C6がそんな生まれ故郷で、そして世界でどのような評価を得るのか興味はつきない。フランスの、そしてシトロエンというメーカーでしか創り得なかった一台がC6なのである。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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