シトロエン 新型C3 2000km試乗|新世代のフレンチコンパクトを徹底テスト(2/2)

  • 筆者: 内田 俊一
  • カメラマン:内田 俊一・内田 千鶴子
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目を見張る高速安定性

何よりも高速道路で驚いたのが直進性を含む高速安定性の高さだ。実は2台借り出したうちの白のほうは決して高速安定性は高いとはいえず、がっかりしたのだが、どうやらこれは輸入されてきたままの状態で、初期整備がなされていなかったようだ。それに対し、青ボディのほうは抜群な高速安定性を見せたので、これを正として評価しよう。

青ボディでは新潟から台風に追われるように帰京しなければならないスケジュール。関越自動車道では、100km/h(場合によっては80km/h)にクルーズコントロールを設定して走行したが、雨や横風の影響もほとんど受けず、軽くステアリングに手を添えたまま、淡々と距離をこなしていくC3にはただただ驚くばかりだった。それに加えてシートの出来の良さも見事だ。およそ300kmの高速では結局1度も休憩を取らず、一気に走り抜けたといえば、そのレベルの高さがお分かりいただけるだろう。

中速域以上でしなやかさを増す癒しの乗り心地

乗り心地は、先代C3をご存知の方であれば少し硬いかなと思われるかもしれない。特に街中においてはその通りだ。しかし、60km/hを超えるとしなやかさが増し、日本車の同セグメントで仇討できるクルマはないと断言できるくらい、しなやかでしっとりとした乗り心地を醸し出す。テスト車はミシュランプライマシー3 205/55R16をはいていたが、決してばね下が重くドタバタした印象をドライバーに伝えることもなく、また、ロードノイズの低さも印象的だった。

さて、今回は積極的にワインディングを攻めるような真似はしなかったが、中・高速のワインディングをそこそこのペースで走ると、軽いアンダーステアを感じる程度で、ひらひらとコーナーをクリアしていく。ステアリングフィールもむやみに軽いことはなく、適度な重さと路面感覚が伝わってくるので、安心してペースを上げることが可能だ。

センターディスプレイの使い勝手はいまひとつ

装備はオートエアコンをはじめ必要にして十分なものがおごられている。しかし、そのレイアウトは決して使いやすいものではない。つまり、空調をはじめオーディオに関連する操作はセンターディスプレイ上で行わなければならないからだ。その操作はパネル上にあるそれぞれのロゴを触れることから始めるのだが、まず、反応したかどうか、また、きちんと目的のものを触れたかどうかがわからず、いちいち画面を見て確認をしなければならないという不便さ、つまりはブラインドタッチが難しい点が挙げられる。

そのあとは画面をタッチして目的の操作をするのだが、そこでも操作感はなく、きちんと思い通りの操作が行えたかわからないのだ。したがって、走行中の操作は危険で、安全を考えるなら、信号等での停車時かあるいはきちんとクルマを停めてから操作する必要がある(オーディオのボリューム等はステアリングスイッチでも操作可能)。しかし、エアコンの温度調整などをいちいちクルマを停めてやるのはやはり面倒。特に高速道路においてはSAやPAまで我慢しなければならないことを考えるなら、せめて静電スイッチにバイブ機能を盛り込むなど、触れた感触を操作する相手に伝えることは必要だろう。もし可能なら、空調関係は別スイッチが望ましい。

また、ハザードスイッチがデフロスター等と一緒に並んでいるので、とっさの時に押し間違えることもありそうた。付け加えるなら、ナビのレベルは決して高くはなく、たまに自車位置がずれることもあった。

クルマ本来のフィーリング向上こそが安全の第一歩

冒頭でも書いたとおり、C3には安全運転支援システムが搭載された。しかしその内容は最近のドイツ車や日本車を見慣れた目には物足りない。フランス車は押しなべて一歩も二歩も遅れているようで、こういった装備を実はあまり気にしていないのかもしれない。それよりも、自動車本来のフィーリングこそが安全運転につながる、つまり、ドライバーにきちんと情報を伝え、かつ、疲れさせない。これこそが安全運転につながると考えているようにも思える。

居住性や質感も申し分なし

新型C3、質感も決して悪くはない。

ただ、唯一気になったのはドアのアームレストトリム。織りが粗いため、素肌に触れると若干擦れて痛く感じることがあった。

さて、居住性はこのサイズとしては申し分なく、これも必要にして十分。何も言い添えることはないだろう。

トランクルームの容量も十分だが、開口部が高く、かつ、床が低いため重い荷物の積み下ろしは難渋しそうだ。

シトロエン・コネクテッドカムを使いこなせるかどうかは“あなた次第”

最後にシトロエン・コネクテッドカムについて。

この装備がC3の売りのひとつになっているが、果たしてこのクルマに必要なのかは疑問の余地がある。C3を購入したどのくらいのユーザーがこれをドライブレコーダー以外に使っているかを知りたいと思う。前方を走っている景色を撮影し、SNSに投稿する機会がどれほどあるのか、また、そんなに素晴らしい景色や面白い光景が前方に広がることはほとんどないようにも思うのだがいかがだろう。

シトロエン新型C3の実燃費は15km/L

今回の新型シトロエンC3のテスト走行は、高速7割、郊外のオープンロード2割、一般道1割程度走破。カタログ燃費18.7km/L(JC08モード燃費)に対し、その実燃費は15km/L程度と優秀だった。

やはりほしかったゼニスウインドウ

かなり目を引くフロントフェイスは賛否両論あり、好みの問題なので言及しないが、コンパクトサイズでありながら、長距離も走りたいという方には239万円という対価を払っても、十分に満足が得られるだろう。

ただし、これは実際に乗ってみないとわからない魅力。このクルマには見ただけでわくわくするような、もう一つの魅力が欲しい。それは、シトロエン・コネクテッドカムなどではなく、もっとこのクルマに乗りたくなる、“ひとめぼれ”の魅力だ。

実は先代にはそれはあった。前席の頭上まで広がる素晴らしい魅力的な装備、ゼニスウインドウだ。今回採用に至らなかった分、新型C3にはパノラミックグラスルーフがオプション設定された。確かに後席の頭上は明るくなったが、結局は後席の乗員も前を見ているので、前方の視界が開けているほうが気持ちはいいはずだ。コストや安全支援システムなどを踏まえ、採用を見合わせたのかもしれないが、C3の大きな魅力が一つ減ってしまったのは残念でならない。ぱっと見の魅力に魅かれて、乗ってみて感動が味わえるコンパクトカーはそうそうないのだから。

参考:旧型(2代目)シトロエンC3の”ゼニスウィンドウ”

<※画像はクリックすると拡大します>

[Text: 内田 俊一/Photo: 内田 俊一・内田 千鶴子]

シトロエン 新型C3 シャイン[FF] 主要諸元(スペック)

全長×全幅×全高:3995×1750×1495mm/ホイールベース:2535mm/車両重量:1160kg(パノラミックガラスルーフ装着車は1180kg)/乗車定員:5名/駆動方式:前輪駆動(FF)/エンジン種類:ターボチャージャー付直列3気筒DOHC/総排気量:1199cc/最高出力:110ps(81kW)/5500rpm/最大トルク:205Nm/1500rpm/使用燃料:無鉛プレミアムガソリン/トランスミッション:6速オートマチックトランスミッション/燃料消費率:18.7km/L(JC08モード燃費)/タイヤサイズ:205/55R16/サスペンション形式:(前)マクファーソン・ストラット式(後)トーションビーム式/メーカー希望小売価格:2,390,000円(消費税込)

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内田 俊一
筆者内田 俊一

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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