GM渾身のコンパクトカー、その是非を問う! シボレー ソニック 試乗レポート/清水草一(2/3)
- 筆者: 清水 草一
- カメラマン:茂呂幸正
オモチャっぽさは、あえての「狙い通り」か
インテリアはというと、こっちはアメリカンというよりトイ・テイスト。インパネのデザインや質感は完全にオモチャである。と言っても狙ってオモチャにしているので、悪口というわけではありません(笑)。
今でもアメリカで一番売れているのは、巨大なピックアップトラックだ[1位フォードFシリーズ、2位シボレー・シルバラード]。アメリカ人にすれば、コンパクトカーなんてのは、やっぱりオモチャみたいなものなのだ。なんせアメリカじゃ、カムリでもコンパクトなんだから! 日本人の思うコンパクトカーなんざ、“ウルトラスーパーコンパクト”である。
だったらよりオモチャっぽくした方が面白いじゃんか! それがこのクルマの個性だぜ! ということだろう。勝手な推測ですが。
室内の広さはフツーである。特に広くないが狭くもない。かつて、アメリカ人が作るコンパクトカーと言えば、やたらパッケージングが甘く、ボディサイズに比べて室内が猛烈に狭くて腰を抜かすのがアタリマエだったが、このクルマはグローバル・スタンダードに則って設計されているので、室内もカーゴも、コンパクトカーとしてごく普通のサイズを確保している。
骨太な走りはオペル譲り
さてさて、走りの方はどうでしょう。
一言でいうと「骨太」。ガッシリ、しっかり、よく働く農耕馬のような雰囲気だ。
サスペンションは、アメ車のイメージからすると驚くほどハードで、がっちりと路面をつかむ。市街地をちょこちょこ走るより、高速道路を長距離走るのに向いているセッティングである。
これは、少し昔のオペル車の雰囲気に近い。オペルはGMにとって、ヨーロッパ随一の開発・生産拠点。ヨーロッパ仕込みのコンパクトカーを作る技術を持つ貴重な存在だ。ソニックの足回りには、そのオペルの血を強く感じさせるものがある。
エンジンは1600ccのツインカム。アイドリングストップもついてないし、もちろんハイブリッドでもない。最高出力も115馬力と大したことはない。しかし、数値以上の骨太感があり、こっちもほのかにオペルっぽい。
小型車クラスには贅沢な6速ATを投入
特筆すべきは、ATが6速だということだろう。このクラスに6速ATを投入しているモデルは、国産勢には見当たらない。と言うか国産勢はだいたいCVTになっちゃってるんだけど、「CVTはツマラナイ」というのは、ヨーロッパを中心とする走り文化圏の最終結論。まぁ日本製コンパクトカーも、あっちで売れてるのはほとんどがマニュアルなので、関係ないっちゃないですが。
全世界60カ国で販売するこのソニックは、将来を見据えてCVTではなく、6速ATを投入したのか。トルコンATの場合、多段化は高速巡航で燃費を伸ばす大きな武器となる。また、CVTと違って、アクセルを踏み込むと明確にキックダウンするのが、古き良き内燃機関のヨロコビを彷彿とさせ、少々目頭が熱くなる。
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