シボレー コルベットZR1 試乗レポート/岡本幸一郎(3/3)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
絶対的な速さにこだわったコルベットZR1
今回の試乗ではその醍醐味すべてを試すことはできなかったが、よりアクセルワークを駆使したマシンコントロールを楽しめる味付けになっているはずだ。
一方で、普通に走ろうと思えば、なんの気難しさを感じることもなく、ごく普通に乗れてしまうフレキシビリティも、このクルマの側面のひとつである。
また、乗り心地がベースモデルなみに快適なことにも感心させられた。これには磁性体を駆使したマグネティックライドコントロールのおかげも大きいはず。
ちなみに同機構は、発売当初には設定のなかったZ06でも現在では選べるようになっている。
そして、速度感をマヒさせるかのような高速走行でのスタビリティを持つ一方で、身のこなしはとても軽快で、極太タイヤを見事に使い切っている印象もある。
軽量化に執心したというZ06と同じく、ZR1にもアルミ製フレームが与えられており、ボディパネルについても、よりカーボンの使用部位が拡大されている。こうした軽量化への努力が走りにもたらしたものもけっして小さくないはずだ。
さらに、圧倒的な動力性能への担保として与えられたカーボンセラミックブレーキの利きも期待どおり強力で、剛性感が非常に高く、コントロール性にも優れる。このままサーキットを本気で何周もしても、ネを上げることはないだろう。
一般的にカーボンセラミックブレーキは、タッチのフィーリングがナーバスなものが少なくないのだが、ZR1のものはとても扱いやすく、市街地でも問題なく使える点もよい。
頼もしいブレーキ性能もZR1の武器のひとつである。そんなZR1には、1490万円というプライスタグが付けられており、これはベースモデルのクーペの755万円に対しほぼ倍、Z06は985万円なので約1.5倍となる。
ただし、Z06にエンジン以外の部分の走りに関する装備をZR1なみにできる「アルティメットパフォーマンス パッケージ」(170万円)や、前出の約70万円のカスタムレザーラップインテリアなどのオプションを装着すると、それほど大きな差ではなくなるので、けっしてZR1が法外に高いわけではない。
レーシングカー仕立てのZ06は、7リッターもの大排気量エンジンがまるで往年のVTECのように回り、シャープなハンドリングを楽しませてくれるドライブフィールがウリだが、それに対しZR1は、絶対的な速さにこだわったクルマといえる。
そして実際、圧倒的な動力性能と、それをしっかりと路面に伝え、速さにつなげることを叶えたクルマであることは、ニュルの北コースを7分26秒4という驚愕のタイムで走り切ったことが証明している。一時は先行きが不安だったGMの底力を、ひしひしと感じさせられた次第である。
この記事にコメントする