BMW Z4 Mクーペ 試乗レポート

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Z4クーペシリーズのホッテストバージョン

Mクーペ、改め『Z4 Mクーペ』へ――ポルシェ ケイマンやアウディ TTクーペといったオールニューモデルが登場をする中、こうしたネーミングを与える事でZ4シリーズ全体のプレミアム度を高めようという狙いも感じられるのが、Z4クーペシリーズのホッテストバージョンとしてリリースされたこのモデルだ。

ご存知M3やM5/M6などと同様、Z4 Mクーペを手掛けたのはBMWの関連会社であるM社。すでに発売済みのBMW車を“ベース”としながらも、同社独自のコンセプトとそれに基づいた各種のチューニング、ドレスアップによって、そもそも高いプレミアム性を有するオリジナルのBMW車に対してさらに際立った走行性能と究極のエクスクルーシブな雰囲気を実現させるのが、これら”Mモデル”のやり方という事になる。

そうした独自の手法で少数台数が仕上げられる特別な人のための特別なモデルであるだけに、そのプライスタグも飛び切り高価なものとなるのは必然。Z4 Mクーペの800万円を越えるその価格も、オリジナルZ4クーペ 3.0siの実に230万円以上のプラスという設定だ。

何から何までもがスペシャルなデザイン

当初はロードスターのみでリリースをされたZ4というモデル。ロングノーズ/ショートデッキの典型的な“FRプロポーション”の持ち主であるそれをベースに開発された2005年秋のフランクフルトモーターショーで初公開のZ4クーペは、すでにそれそのものが飛び切りユニークで個性的なスタイリングをアピール。さらにM社の手によって様々なドレスアップを施したMクーペのルックスがひと目で「ただ者ではない!」という強いオーラを放つのも、だから当然ではあるだろう。

“標準車”に対してロワーグリルの開口部が拡大され、両端下部にはエアダムリップが加えられたフロントバンパーや、4本出しのテールパイプを見せつけるやはり専用造形のリアバンパーが、遠目にも迫力をアピール。細身の10本スポークを持つ18インチホイール内に収められたドリルド・ディスクブレーキも、このクルマの走行性能の高さをさりげなくアピールする。

“Mデザイン”による専用ステアリング・ホイールやシフトパターンを表示する照明付きノブが誇らしげなインテリアは、さらに各部の化粧パネルなどにも専用のデザインを採用。フロントエンジン車ながらシート背後に高い”壁”が立ちはだかるのはベースボディがロードスターであるがゆえ。ちなみに、それゆえ振り向き後方視界は最悪レベル。が、こうして何から何までもがスペシャルなのがZ4 Mクーペのデザインの特徴なのだ。

脚はかたく、ストロークも短めな「乗り手を選ぶ走り味」

Z4 Mクーペに搭載されるのはご存知M3から譲り受けた3.2リッターの直列6気筒ユニット。より排気量の大きなケイマンS用エンジンが発するデータを実に50ps近く(!)も上回るという最高出力の値に、まずはこのモデルが「エンジン命!」のメーカーの作品である事を知らされる。実際、例の官能的なエンジンサウンドを耳にしながら昨今では久しくお目にかかっていなかったほどの踏力を要するクラッチをミートすると、個性的デザインを持つクーペのボディは弾かれたように加速する。パワーステアリングもかなり重めの味付け。ただし、“極太”と表現したくなるほどのステアリング・グリップの太さはだけは、さすがに「やり過ぎ」という思いが拭えないものだが・・・。

かつてテストドライブを行った『Z4 Mロードスター』に比べると乗り心地が優れて感じられるのは、より振動減衰性に優れた高剛性クーペボディの成せる技という面が大きいはず。65kgという小さくない重量増を容認しつつロードスターのボディに「ルーフを加えた」効果は、決してデザイン面だけには留まらないという事だ。とは言いつつもそれは相対的な比較論で、絶対的には「脚はかたく、ストロークも短め」という印象に変わりはない。路面凹凸ではヒョコヒョコと跳ねるような動きを示すのは、しなやかさを追求するケイマンやTTとは対象的ですらある。一方で、そんなテイストがそうしたライバルとは比較にならない『男の乗り物』という印象につながっているのもまた確か。Z4 Mクーペの走り味は、ある意味「乗り手を選ぶ走り味」でもあるのだ。

何よりもまずドライバーの感性を刺激するピュアなスポーツクーペ

レッドラインを8000rpmという高いポイントに設定し、1リッター当たり軽く100psを越える圧倒的なパワーを絞り出すというレーシングユニット並のハイチューンエンジンを搭載したZ4 Mクーペ。それは、まさにBMWのパートナーであるM社が総力を挙げて作り上げたピュアなスポーツクーペ。一方で、それが何よりもまずドライバーの感性を刺激する事を意識しながら開発され、場合によっては絶対的性能よりも「感覚的な心地良さ」を優先させるスタンスすらを感じさせるのは、ライバルたちのクルマづくりとは大きく異なるポイントだ。

それは、見方によっては「古典的なスポーツカー」と評価されるかも知れない。これほどまでにシャープなハンドリング感覚やアクセルレスポンスを演じられたら、リラックスして走れない・・・」という意見を持つ人も居るだろう。

が、だからこそ今の時代、これほどまでに個性的なキャラクターを演じる事に成功しているというのも、またこのクルマならではの貴重なポイントと言えるはずだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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