BMW X6M 海外試乗レポート/西川淳 編(4/4)
- 筆者: 西川 淳
- カメラマン:ビー・エム・ダブリュー株式会社
サーキットでは信じ難いほどのハンドリングマシンへと転じるX6M
見慣れたインテリアではある。これまでのMモデルに初めて乗ったときのような、気分の昂揚は残念ながら無い。より高級な仕立てのX6、という風にボクの目には映った。きっと、これもMの新たな狙いだ。
トルコンATだけあって、発進からタウンスピードクルージングまで、スムースのひと言。とてもじゃないがこのクルマが550馬力の心臓を飲み込んでいるとは思えない。ライドフィールも電子ダンパーシステム(EDC)をノーマルにしておけば至って快適なもの。あまりにも洗練された乗り味に拍子抜けして、思わずEDCをスポーツにしてみたが、それでも心持ち硬くなってサスの動きがリズミカルになるだけで、硬くて不快というまでには全く至らなかった。
一般道でMのイメージを存分に覆されたのち、試乗車はサーキットへと鼻先を向けた。ロード・アトランタである(試乗会はアトランタで行われた。それはX5とX6がこの近郊で生産されているからだ)。ステアリングの○Mボタン(Mドライブスイッチ)を押し、臨戦態勢に入る。(それはそうと、この○Mボタンのデザイン、もう少し何とかならないものか。あまりにも質素でさりげなさすぎだし、格好も悪いような・・・)
このクラス初の、前後異サイズタイヤを履く。それゆえ、Xドライブ(4WD)も単なるトラクション稼ぎの道具でないことが分かる。FRのように積極的に走りを楽しめるように作動するのだ。
シフトアップは、全くトルコンのスリップを感じさせない。バッバッバッとサウンドも派手に加速してゆく。550馬力のターボカーであることをそれほど意識させないのも、Mゆえか。とはいえ、速度計を見ると恐ろしい領域に達している。速さを感じないのは、ちょっともったいないか。シフトダウン時のブリップは抑え気味だ。ブレーキがかなり奥で効く。かなりの重量物であることをあえて、ドライバーに伝えたいためだろうか。
サーキットでは、信じ難いほどのハンドリングマシンへと転じた。背が高いことのデメリットを感じない。むしろ見晴らしがいい分、アップダウンの激しいロード・アトランタでは重宝する。前輪の食いつきを意識しつつ、慌てないようにアペックスに向かう。アクセルオンも慌てず騒がず。ただ、コーナーを駆け抜けるのを待つのみ。そして、アクセル全開!
正に、SUVのGT−Rといったクルマであった。そして、垣間見えた洗練性とスポーツ性の両立。そこがMの新境地というわけである。
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