BMW 新型電気自動車「i3」(アイスリー) 国内試乗レポート/今井優杏(1/4)
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:ビーエムダブリュー
近未来のモビリティの姿を具現化した「BMW i」第一弾がいよいよ日本へ上陸
ドイツ・BMWが、近未来のモビリティのあるべき姿を具現化した電気自動車「BMW i」。その第一弾となる「BMW i3(アイ・スリー)」がいよいよ日本へやって来た!
「駆け抜ける歓び」を掲げるBMWが創るEV(電気自動車)が魅せてくれる新たな世界観とは。自然豊かな鹿児島・屋久島で行われた国内初試乗会の模様を、速報でお届けする。レポーターは、我らが今井優杏さんだ!
『もののけ姫の森』として世界にその名を轟かせる屋久島は、鹿児島の南135kmに位置する周囲約130キロ、面積約504平方キロメートルというなかなかに小さな島だ。
小さなプロペラ機でゆっくりと島に近づいて行くとき、その島のジオラマティックというか箱庭的なコンパクトなサイズ感に驚いたと同時に、もうひとつ、異様なまでに海岸線近くまでニョッキリとそびえ立つ急峻な山肌から醸される、一種異様な押し出し感と迫力にも戦いたのであった。なんじゃこりゃ。ハワイ諸島のようではないか!
それもそのはず、ちょっと角の取れたペンタゴンのような形のこの島には、九州で一番高い山・宮之浦岳(1936m)をはじめ1000m級の山々が連なり、島の90%が森林で、その4割が国立公園として保護された豊かな緑の島だ。
1ヶ月に35日雨が降る、自然遺産の島
高い山々へ沖合に流れる暖かい黒潮が水蒸気となって駆け上がり、急激に冷やされることで雨が降る。実に年間9000mmという豊かな雨量は小説家・林芙美子が『屋久島は1カ月に35日雨が降る』と書いた名言で知られるほどで、我々が滞在した翌日もまさにそれを物語る、激しい雨が降った。
まるで島全体が洗濯機の中に入っちゃったかのような、東京サマーランドのでっかい樽がひっくり返るプールのような雨は、散々気まぐれに島の隅々までを洗い上げたのちにウソみたいにスッキリと止み、ホテルの後方にある美しい山の岩肌にはいくつもの白い筋が現れたのだ。
『あれは、雨が降った時だけ現れる滝です』
ホテルの方が教えて下さった。
屋久島の基盤は隆起した花崗岩で出来ている。その上を植物同士が根を張ってわずかな表土をシェアし、その根が水を蓄える。雨でそのダムが溢れたら、いくつもの滝となって海へ流れ込むのだ。
100%水力発電で電力をまかなう島で、CO2ゼロの電気自動車に乗る意味
その豊かな水流、水資源を利用して、屋久島は現在、年間発電量の実に99,5%をまかなう水力発電の島になっている。のこりの0,5%は水が枯渇した場合のための非常用火力発電で、あくまでも非常時のみの作動なために、島の皆さん(と永らくの滞在ですっかりローカル人と化したBMWの皆さん)が誇らしげに『屋久島は100%水力発電です』と言い切っておられたのが印象的だった。
というわけで屋久島の電力は発電の際にCO2を完全に出さない。だからテールパイプを持たない電気自動車をそこで走らせたら、それは完全にCO2フリーのモビリティとなり、あのナチュラリストで作家のC.W.ニコル氏が『これは神だ』と讃えた縄文杉を始め、コダマの住む森の大気を汚すことなく、島内を駆け巡ることが出来る。
生産段階から『サスティナビリティ』=持続可能性を追求して生産されるBMWの新しいモデル、BMW iシリーズの第一弾モデルとなるピュアEV、「BMW i3」のデビューの場として屋久島が選ばれたのは、そういう理由があったのだった。
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