BMWが新たなクルマ販売を模索、カーディーラーの「役目」が変わる?(2/2)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:BMW ジャパン/桃田健史
BMW グループ 東京ベイの現場体験
お台場を走る無人電車の「ゆりかもめ・東京臨海新交通臨海線」。青海(あおみ)駅と、船の科学館駅とを直線で結んだ、その中間地点に巨大なBMWディーラーが生まれた。
その名は、BMWジャパンの直営店、BMW東京が運営する「BMWグループ東京ベイ」だ。
ここには、BMWとMINIの全モデルが取り揃えてあり、大型のショールームに隣接する試乗スペースや一般公道で、顧客が思う存分、試乗することができる。
敷地は、隣接する道路の長さが149m×178mで、総面積は27000㎡。土地を管理する東京都から12年間の借地契約を結んだ。施設建物は、111本の支柱を地下40mまで打ち付けており、東京直下型地震が襲った場合での液状化現象への対応は万全だという。
この施設は、7月上旬にグランドオープニングとなるが、準備段階として6月1日に「ソフトオープニング」を実施。業界関係者への内覧会に加えて、一般顧客向けにも公開するという、日本での異例の体制を敷いている。そうしたなか、自動車業界ジャーナリスト向けの内覧会が実施されたのだ。
正面入り口にある「センター棟」には、他のBMWディーラーでは見かけたことのないルーフの形に目を奪われた。有名デザイン事務所が設計した、円形の造形を組み合わせた幾何学的な文様だ。
施設内部に入ると、その広さに圧倒される。メインショールームには、全長約80mに渡ってBMWフルラインアップが2列で並ぶ。また、MINIショールームでは、新たなるブランド戦略として、これまでの明るい色を使ったポップな雰囲気ではなく、モノトーンのシックなインテリア造形を施した。
カンファレンスルームを通り、ドライビングエリアに入ると、そこでは自動散水機能を完備したスキッドパットやレーンチェンジ、急ブレーキが体験できるエリアが。最高速度は時速70キロ程度を設定しており、安全対策としてガードレールにはFIA公認の衝撃緩衝材を施した。
新たなる売り方の模索
BMWジャパン関係者によると、「BMWグループ東京ベイ」は6月1日以来、1週間あたりの来場者数は平均1000人。試乗実績は、1日平均で70~80台に達しており、すでに当初計画の年間2万5000台達成のためのペースになっているという。試乗で人気なのは、「i8」と「M2」で、ネット予約で数週間先まで予約は一杯だ。その他のモデルについては、試乗枠に余裕があり、なかにはひとりで5台乗り比べる人もいるという。
内覧会の後、筆者は同施設の運営責任者に、前述の「アメリカでの緊急事態」を引き合いに出して、「日本でも同様の事態が起こっているのか?」と聞いた。
これに対して同氏は、日本での状況はアメリカとは違い、ここはあくまでも「BMWブランドを理解していただく場所」だと強調した。近年、日本市場ではジャーマン3による販売競争が熾烈になるなか、BMWとしての特徴をダイレクトに顧客へ伝えるための「秘策」だという。だた、施設としては韓国で始まり、アメリカに派生した「エクスペリエンス・センター」との関係性は当然あり、「それを東京の状況を合わせてカスタマイズした」と説明した。
さらに「この東京ベイが成功すれば将来的には、BMWジャパンの直営店がある関西エリアでも、ここと同様の施設開設を考えたい」と抱負を述べた。
[Text:桃田健史]
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