BMW M760Li xDrive 試乗│2000万円オーバーのBMWの最上級セダン、その実力やいかに!?(1/2)

BMWの最上級セダン 7シリーズ

BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、フォルクスワーゲンといった各ブランドは、それぞれが個性的な持ち味を備える。これが端的に表現されるのは、コンパクトな車種とミドルサイズになることが多い。

コンパクトな車種は、価格も下がるから付加価値を削らねばならず、各ブランドの本質が浮き彫りになる。ミドルサイズは各ブランドの中心的な存在だから、走行性能、居住性、燃費、価格までバランスが良い。そこでコンパクトとミドルサイズが注目されて売れ行きも伸びる。

BMWも同様で、コンパクトな1シリーズは少し人気を下げたが、ミドルサイズの3シリーズは注目のモデルだ。

しかし主力からはずれる最上級の7シリーズも、改めて試乗するとBMWの持ち味が色濃く感じられた。

試乗したグレードはM760Li xDriveで、2016年10月に追加設定(予約注文を開始)した仕様だ。7シリーズの最上級グレードだから、BMWの最上級セダンに位置付けられる。

ボンネットが良く見えて四隅も分かりやすい

最上級モデルの7シリーズのロングだからボディは相当に大柄だ。全長は5250mm、全幅は1900mmで、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は3210mmに達する。7シリーズの標準ボディに比べても、全長とホイールベースがそれぞれ140mm長い。最小回転半径は6.1mと大回りだ。

エンジンは物凄く、V型12気筒6.6リッターを搭載する。これだけで動力性能は十分だと思うが、さらにターボまで装着した。最高出力は610馬力(5500回転)、最大トルクは81.6kg-m(1550~5000回転)に達する。

排気量が大きいから、ターボを装着すれば現在の数値以上に高い性能を発揮させることも可能だろうが、走行安定性とのバランスも考えて抑制を利かせた。そのために最大トルクの発生回転域が1550~5000回転と幅広く、使いやすさにも配慮されている。

通常の走行では1600~2000回転前後を頻繁に使うから、常に太いトルクが発生して運転がしやすい。そこからアクセルペダルを深く踏み込むと、V型12気筒らしく速度を一気に上昇させる。

前述のようにボディが大柄で小回り性能も悪いから、街中で運転しやすいとはいえないが、さほど悲観的でもない。ボンネットが良く見えて、水平基調のスタイルだからボディの四隅も分かりやすい。視線の高さもちょうど良く、全長が5m前後に達するLサイズSUVほど運転しにくい印象はない。

Lサイズのボディと軽快な運転感覚の組み合わせがBMWらしい

大きくてもBMWらしいと感じたのは、操舵した時の車両の反応と走行安定性だ。前述のようにホイールベースは3mを大幅に超えて、車両重量も2320kgに達するが、ハンドルを少し回しただけで車両の向きが正確に変わろうとする。Lサイズのセダンとしてはステアリングの設定が機敏だ。

ハンドルを左右に切り返すS字カーブを曲がる時も、ボディが左右に揺り返しにくい。重量級のボディながら、カーブを曲がる性能も高く、小さく回り込む場面でも旋回軌跡を拡大させにくい。Lサイズのボディと軽快な運転感覚の組み合わせがBMWらしさだ。

ホイールベースが長いこともあって後輪の接地性は高い。4WDのxドライブも採用されるから、高速道路の巡航を安心して行える。前述のようにボディが大柄な割に良く曲がるため、後輪の高い踏ん張り感と相まって、危険を回避する能力にも余裕がある。

7シリーズは全車にエアサスペンションが標準装着され、エンジンやATを含めて、アダプティブ/スポーツ/コンフォート/ECO PROの切り替えモードを設けた。アダプティブを選ぶと、足まわりなどが走行状態に応じて最適にセッティングされる。

それでも乗り心地は、全長が5mを超えるLサイズのセダンでは硬めだ。上級セダンだから粗さを抑えて上質だが、コンフォートモードを選んでも柔軟にはならない。タイヤは20インチ(前輪:245/40R20・後輪/275/35R20)で、銘柄はブリヂストン・ポテンザS001であった。このタイヤの設定も、先に述べた機敏な操舵感と硬めの乗り心地に影響を与えている。

試乗した時はLサイズセダンに似合わない足まわりだと感じたが、見方を変えればBMWの性格には合っている。全長が5m、ホイールベースが3mを軽く超える上級セダンの選択肢は、一般的にはメルセデス・ベンツ Sクラスが定番だろう。この選択を避けて、敢えて最上級のBMWを購入するユーザーの気持ちを考えれば、この程度の硬さと、ボディがコンパクトに感じる運転感覚は不可欠の条件だと思う。

その意味では、メルセデス・ベンツSクラスと比較すると、7シリーズのBMWらしさが一層際立ちそうだ。

BMWらしい座り心地で、ドライバーが車両との一体感を得やすい

BMW M760Li xDriveはBMWの最上級セダンだから、内装も上質だ。インパネの基本デザインは3シリーズなどに通じる水平基調だが、メッキパーツの使われ方が艶っぽい。BMWを含めたドイツ車らしくない雰囲気で、無国籍的な印象も受ける。このあたりは高級感に紛れて、BMWらしさが希薄になる一面でもあるだろう。

Lサイズセダンだから車内は当然に広い。それでも前席はホールド性が優れ、引き締まり感を持たせた。シートが体をスッポリと包むようなBMWらしい座り心地で、ドライバーが車両との一体感を得やすい。

後席は座り心地がBMWでは柔軟に仕上げられてかなり快適だ。前席とは印象が大きく異なる。全高は1485mmだから、セダンでは少し高く設定され、天井があまり後ろに向けて下降していない。従って着座位置が適度に高まり、なおかつ頭上の空間も窮屈ではない。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ3つ半。頭上にも握りコブシ1つ分の余裕がある。これだけ広ければ、大人4名が乗車して、長距離を快適に移動できる。

BMW/7シリーズ
BMW 7シリーズカタログを見る
新車価格:
1,554万円1,588万円
中古価格:
60万円1,497万円
1 2 次へ

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!
カー用品・カスタムパーツ

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は、申込翌日18時に最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

新車・中古車を検討の方へ

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

BMW 7シリーズの最新自動車ニュース/記事

BMWのカタログ情報 BMW 7シリーズのカタログ情報 BMWの中古車検索 BMW 7シリーズの中古車検索 BMWの記事一覧 BMW 7シリーズの記事一覧 BMWのニュース一覧 BMW 7シリーズのニュース一覧

この記事にコメントする

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる