アウディ RS4アバント ミニ試乗レポート/今井優杏(2/3)
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:和田清志
ホクホクする多彩な仕掛け
しかし最初に乗り出すときの印象はあまりにノーマルだ。
確かにRSの赤バッジを備えたレーシング感あふれるエクステリア……たとえば正月のお餅だってこんな巨大な網では焼かんぞと思ってしまうほどグワッと大きく開いたメッシュグリルだとかスポイラー類、パンっと張り出したブリスターフェンダーはS4と比べても相当に威張りが効く。
それからインテリアだって、むろん抜かりない。
ダッシュボードまわりにカーボンが多用され、フラットボトムの小径ステアリングにももちろん赤バッジが入るのだから。
シートにも特別感はきっちり演出されており、ここにもRSの刻印が配されている。つまり、乗り込むだけでホクホクする仕掛けは存分になされているのだ。
ドライブモードは4つから選択可能
なのではあるのだけど、まずエンジンを始動した際に選択されるのは“自動”のドライブモード。
アウディのドライブセレクトは連続可変ダンパーをはじめ、パワステ、エンジン、ツインクラッチのトランスミッション・Sトロニックをモードごとに自動で制御してくれるものだが、RS4アバントでも“コンフォート”“自動”“ダイナミック”そして“個別”という、4つのモードを選択出来る。
そのコンフォート及び自動は、きっちり普段乗りに対応出来るくらいにジェントルなのだ。それにまず感激した。4.2リッターNA V8エンジンからはいくらソフト系ドライブモードだって隠しようのないくらいにドロドロと腹に響くエエ音が放たれてはいるけれど、まあバング&オルフセンの高級サウンドシステムから流れる音楽を楽しめるくらいには抑えられているし、そっと踏み込めば加速だって普段使いに充分対応出来る柔らかい滑り出しを見せる。君、なかなか見た目よりも好青年やないか、と最初に思わせる作戦?だ。
羊の皮を被った、とんだ狼
それが、だ。
ダイナミックモードを選択した瞬間に、形相が一変する。もうまさに怒りに打ち震えた阿修羅のごとく、獰猛な素顔をさらけ出すのだ。そのタガの外れた夜中の殿方のような豹変ぷり(きゃっ)たるや!
特にぎゅっとアクセルを踏み込んだ4,500回転以上の加速の鋭さはもう、音速なんじゃないかと勘違いしてしまうくらいの押し出され……いや、蹴られ感である。それに件の勇ましいサウンドがくっついてくるんだから、もう気持ちいいとかなんとかよりも、こんなに速くてすみませんと頭のひとつでも下げたくなってしまうくらいだ。
先代よりも+30psとなった450psを発揮し、0-100km/h加速はこれも先代比−0.1秒の4.7秒。繰り返すようだが、こんなステーションワゴンという羊の皮を被った、とんだ狼なのである。
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