メルセデス・ベンツ TecDay E-Drive 試乗レポート(3/3)
- 筆者: 大谷 達也
- カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
メルセデスが想定する未来のクルマ社会とは
最初に乗ったのは、現行AクラスをEVにモディファイしたAクラス E-CELL。
これは今年の秋までに500台が“量産”されたメルセデスのEVとしては最新作で、ブースト時の最大出力は70kw/95hp、巡航時の最大出力は50kw/68hpというもの。
また、最大トルク290Nm、最高速度150km/h、航続距離は255km(NEDC)と発表されている。
発進の手順はいたって簡単で、普通のAクラスと同じように「イグニッションキー」をひねり、電源を「Ready」の状態まで立ち上げるだけ。
あとは、これまた普通のAクラスと同じセレクターレバーでDモードを選び、パーキングブレーキを解除してから「スロットルペダル」を踏めば、Aクラス E-CELLはするすると動き出す。
もちろん、ここにくるまでノイズらしいノイズは一切なし。インバーターからと思われる高周波音が、軽く耳に届く程度である。
EVの多くがそうであるように、このAクラス E-CELLも実に力強い加速感を示す。
フルスロットルで走り出す瞬間など、驚くほど鋭いダッシュを見せてくれるくらいだ。しかも、静かなこときわまりない。おまけに乗り心地がよかった。
ダンパーの動き出しがとてもスムーズで、「ひょっとしたら普通のAクラスよりもいいかも?」と思えるくらい快適だった。
最後に試乗したのは、現行Bクラスを燃料電池車に仕立てた「Bクラス F-CELL」。
燃料電池車といっても、車内で生み出した電気エネルギーでモーターを回して車輪を駆動するのだから、フィーリングはEVとまったく同じはずと思っていたのだが、Aクラス E-CELLに比べると微妙に加速感が鈍い。
聞けば、搭載している電池の容量の違いが、ダッシュ力にも影響を及ぼしているとか。乗り心地も、なぜかAクラス E-CELLに比べると微妙に見劣りした。
もっとも、今回試乗したのは、本格的な量産ははるか先の、試作車のそれまた試作車くらいの位置づけのクルマである。今後の開発次第で、より洗練された仕上がりとなっても不思議ではない。
EVに突っ走ったりハイブリッドを突き詰めたりと、自動車の次世代動力源への対応はメーカーによってマチマチ。
しかし、今回のTecDayに参加して、メルセデスが未来に向けて明確なビジョンを描いていることがわかった。彼らが想定する未来とは、EV、ハイブリッド、そして燃料電池車が混在するクルマ社会である。
もしそれが現実になれば、次世代動力源を全方位的に研究・開発しているメルセデスの立場は一層、強固なものとなるだろう。
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