アルファロメオ アルファスパイダー 海外試乗レポート(2/3)
- 筆者: 西川 淳
- カメラマン:フィアット・オートジャパン
リア斜め後方からのラインは見蕩れるほど美しい
前述したように、ジウジアーロとピニンファリーナによる合作ともいうべきスタイリングである。実際にはアルファロメオのチェントロスティーレが細かく仕上げたものだろうが、基本スケッチが両大御所カロッチェリアの手になるものであることに違いはない。
フロントからの眺めは、というわけで、ジウジアーロ作ブレラ顔に相違ない。フロントノーズを長くスラントさせ、ユニークなヘッドライトと伝統の盾グリルを配した最近のアルファトレンドな顔付きだ。
ブレラと同じ表情が激変するのが、ドア以降である。名車フェラーリ250LMを彷彿とさせる盛り上がったリアフェンダーラインが、そのまま流れるようにトランクエッジを回りこみ、反対側のフェンダーラインへと連なっている。微妙な抑揚を描きながら流れるラインは、見蕩れるほど美しい。
新型スパイダーを最も美しく見たいというならば、そのラインを思う存分鑑賞できる、リア斜め後方からをお勧めしたい。それも、違うスパイダーに座ってそのドラポジから眺めるのが最高だ。試乗会会場を出る順番待ちの際、オープンにして出てゆく他チームのスパイダーを見ていて、心底そう思った。
ソフトトップにこだわったのは正解だったと思う。ピニンとベバストの組み合わせと言えば、今やオープンカー界で人気のCC化において、世界最高のコラボレーションである。当然CC化も検討したと思いきや、アイデアこそあったものの真剣な議論をするまでに至らなかったらしい。アルファスパイダーの伝統を守るべく、迷うことなしにソフトトップを選んだということだった。
トップを閉じた状態の華麗なスタイリングを見て、その判断を正しいと思ったのは筆者だけではあるまい。惜しむらくは、トップカラーが黒一色だということ。今後のバリエーション展開に期待したい。
インテリアはブレラとほぼ同じ。ダッシュボード周りやシート形状、カラーコーディネートなど、雰囲気的には既に159&ブレラでお馴染みのものだ。全自動ソフトトップの開閉ボタンがシフトベース後方のドライバー脇に配されていることと、ブレラの+2シートの代わりに前席後方に小物入れが2つ用意されたことが、強いて挙げるべき違い。BOSEサウンドシステム搭載車には小物入れの間にサブウーハーが 配置される。
試乗会のあった6月は、南イタリアの最も素晴らしい季節。早くも海水浴客で賑わう海岸に撮影車両を持ち込むと、あっという間に人だかりとなった。老若男女、イタリア人という人種はやっぱり相当なクルマ好きである。カメラマンの指示に従ってクルマの移動をしていた我々が、イタリア語で質問攻めにあったことは、言うまでもない。ちゃんと答えられたかはなはだ不安だが、イタリアの宝なのだろう、彼らの表情は自慢の子供を見るように、一応に笑顔であった。
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