アルファロメオ アルファ8Cコンペティツィオーネ 海外試乗レポート(3/3)

  • 筆者: 西川 淳
  • カメラマン:フィアット・グループ・オートモービルズ・ジャパン
アルファロメオ アルファ8Cコンペティツィオーネ 海外試乗レポート
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絶対性能だけではない、ドライバーを興奮させる“時間”の持ち主

古典的で緊張感みなぎるロングノーズ&ショートデッキのスタイリングに内包されるメカニズム様式は、基本的にマセラティグランスポルト・カンビオコルサと同様の成り立ちであると考えていい。すなわち、4.7リッターにまでスープアップされたフェラーリ直系の90度V8DOHCエンジンがフロントミッドに置かれ、ミッションはグラチアーノ製6速MTでトランスアクスル方式を採用。そこにマネッティマレリ製油圧自動変速システムを組み合わせている。マセラティに限らず、アストンマーチンV8ヴァンテージあたりとも同様のサプライヤー&システム構成である。

2ペダルロボタイズドミッションにはオートモードとスポーツモードが用意されている。オートでは完全自動変速、スポーツではシフトチェンジ時間の短縮と豪快なエグゾーストノートが楽しめるという案配。穏やかな発進変速のスノーモードの用意もある。

エンジンスタートボタンを押すと、セレモニーよろしく野太いエグゾーストノートが響く。スポーツモードを選ばない限り、うるさいのはエンジンが掛かった一瞬だけで、そのあとは低く棚引くのみ。これなら何とか住宅街でも使えそう。オートモードの走りも、まずはスムースであった。耐久性については何ともいえないが、不快なショックも少なく、フルスロットルを試みない限り穏やかなシフトチェンジに終始する。豪華なグランドツーリングカーとしても使えそうだ。

マニュアルでスポーツモードを選べば、その性格は激変すると言っていい。明らかに猛々しくなったエグゾーストノートは、マフラー内のフラップが全開になったことを意味する。空ぶかしを試みると、フェラーリよりも重奏的でかつ伸びやかなサウンドが、イタリアの乾いた空気に木霊した。何とも気分を昂揚させるサウンドだ。エンジンレスポンスも鋭いから、余計に走りへの期待が高まる。

ギアを1速に入れ、フルスロットルを試みる。暴力的な加速、というわけではない。450CVという割には少し物足りないとも思ったが、それだけクルマの完成度が高いということなのだろう。軽量ボディに起因するびびり音などは皆無で、豪快に吐き出す空気とともにどこまでも続くかの様な加速フィールを楽しむことができる。

そう、8Cは加速のプロセスを楽しむクルマなのだ。0→100km/h加速を争うのではない。到達点を競うのでもない。そこに至る時間で、どれだけドライバーを興奮させることができるか。そこに主眼をおいた、真性スポーツカーなのである。

乗り心地は重厚だ。ハンドルやペダルといった操作系のフィールが重めであることもその原因だろう。ボディの剛性が異常に高いためか、サスペンションがよく動き、しなやかと言っていいハンドリングをみせる。ややロールが大きく感じるが、それもシロウトドライバーには有り難い。クルマの動きに対して反応する持ち時間が十分に取れるからだ。結果として、誰もがスポーツドライビングを楽しめるセッティングになっている。ダンパーはザックス製だ。

加速フィールにもまして、減速フィールも心地いい。ガツンとアルミBペダルを踏み込めば、路面ごと後方へ引きずり戻されるかのようだ。それでいて、タッチもよく、コントロールしやすい。沈み込むブレーキングは、減速の楽しさを教えてくれる。

絶対性能だけが能じゃない!アルファロメオ8Cコンペティツィオーネは、より幅広いスポーツカーの魅力を教えてくれるだろう。

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西川 淳
筆者西川 淳

別名ボンジョルノ西川が示すとおり、大のイタリア好き。乗り手をワクワクさせる、刺激に満ちたクルマが好きなので、自然にイタリア車に接することが多い。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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