アルファ ロメオ 4C 試乗レポート/嶋田智之(2/3)
- 筆者: 嶋田 智之
- カメラマン:小林岳夫
エンジンスペックだけでは推し量れない強烈な走り
そういう成り立ちのクルマだからして、パワーとトルクはたった240ps/35.7kgmにすぎないというのに、アルファ ロメオ 4Cの速さはいつもながら強烈な印象だ。
加速はまるで何かが弾けるような勢いで常識を越えて鋭く、メキメキとスピードが伸びていく様子もドラマティックだ。
この手のクルマに慣れてない人なら、襲いかかってくるあまりの加速感になかなかスロットルペダルを全開にし続けてはいられないようなレベル。タイトなコクピットに充満するダウンサイジング系直噴ターボであることを忘れてしまうような獰猛なサウンドが、その感覚をさらに増幅してくれる。まるで小さなスーパーカー、である。大きなスーパーカー(?)といえる500ps、600ps、700psといったクルマを何度となく体験したことがある身でも、絶対的なパワーで重量をはね除けようとするのではなく、軽さが抵抗なしに速さを生み出していくダイレクト感たっぷりのそのフィールには、素直に楽しさと興奮を感じてしまう。
ワインディングロードはもう、歓喜の世界だ!
そしてコーナーをふたつみっつ走り抜けてみると、このクルマのクライマックスがどこにあるのかを誰もが理解できることだろう。そう、ステアリングを操作しているその瞬間、である。
ワインディングロードは、それはもう歓喜の世界だ。まるで自分の腕とタイヤが直結してるかのようなレスポンスの良さ、どうにでもできそうなくらいの素直さ。低速コーナーも中速コーナーも高速コーナーも、どれも全く苦手とすることなく、とんでもないスピードで、極めて従順に、まさしくオン・ザ・レールのまま、コーナーを次々とあっさりクリアしていく。ちょっとやそっと攻めたぐらいではどこにクルマの限界があるのかを掴むことは難しい。クルマが限界を迎える前に、ドライバーの感覚が限界を迎えてしまうからだ。
アルファ ロメオ市販車史上最速のモデル
もちろんサーキットのような場所に持ち込めば、その限りではないだろう。バロッコのテストコースでのアルファ ロメオ 4Cは、ときおりリアタイヤが限界を超えることもあったが、そのときの動きはミドシップというレイアウトから想像するようなピーキーなものではなく、掴みやすくコントロールもしやすいものだった。そうした従順さを上手く引き出してドリフトを楽しむことだって、それなりの腕があって慣れてさえしまえば、いくらでもできることだろう。
おそらく4Cは、トータル・パフォーマンスからいえば、アルファの市販車史上最速であるに違いない。タイムアタックの聖地であるニュルブルクリンクの北コースでマークした8分4秒40という数値は、V8搭載の「アウディ R8」とほぼ同等、997型の「ポルシェ 911カレラ」やE92型の「BMW M3」を凌ぐもの。けれど、それより何より、4Cを走らせていると、鳥肌がたつほど気持ちいい。猛烈にスリリングであり、堪らなくエキサイティングなのだ。アドレナリンとドーパミンとセロトニンが品切れになるまで走っていたくなるほどの、最高に楽しい体験だ。快楽装置としてのクルマを手に入れたいと考えている人には、間違いなく最適な1台であると断言してもいい。
[ピュアスポーツカーだけど、実用性だって・・・次ページへ続く]
この記事にコメントする